*この記事は2013年2月号DEEP[「オーナー騙し」の蛮行]からも引用しています。

 

レオパレス元幹部によれば、「平成7年~8年頃に相次いで建築された物件タイプには構造上の欠陥があり、その修繕費用を逃れるために軒並み契約を解除している」<終了プロジェクト>という驚愕の実態まで浮上している。

◇ 管理戸数が年1万5千戸も激減

「30年にわたってアパートを丸ごと借り上げます。空室の有無にかかわらず賃料をお支払いしますので、安定的にアパート収入を得ることができますよ」。平成7年初旬、年金暮らしをするYさんのもとを、レオパレスの営業担当者がアパート経営を勧めに訪れた。Yさんに不動産賃貸業の経験はなかったが、「預金通帳だけ見てればいいんです」という説明に心が動いた。「我々が建築を請け負ったアパートを30年にわたり一括して借り上げるので、自らアパートを管理・運営する必要はありません。遊休地にアパートを建てるだけでいいんです」。

しかも、当初10年間の固定賃料保証に加え、4年目以降は賃料を2年毎に原則3%ずつ値上げする契約内容を説明され、見せられた収支計画書は右肩上がりの曲線を描いていた。Aさんは結局、平成7年から9年にかけて3棟のアパートを建設。金融機関から借り入れたアパート建設資金は3億円近くにのぼった。

ところが、借り上げ期間が15年以上も残る平成23年夏、レオパレスからYさんのもとに契約見直しを迫る「内容証明」が送られてきた。そこには「返答がない場合は解約条項にもとづいて解約する」と書かれてある。解約条項があることすら説明されていなかったYさんが担当者に問い合わせたところ、「契約を解除したい」と返答されたという。当時の説明と異なるため拒否したところ、2カ月後にレオパレスから一方的に契約を解除された。

不動産取引に関するADR(裁判外紛争解決手続)機関には、Yさんと同様にレオパレスから一方的に契約を解除されたオーナーからの相談が殺到しており、その一つである日本不動産仲裁機構には年間100件程度の相談が寄せられたという。右肩上がりで伸びていたレオパレスの管理戸数は昨年度だけで1万5500戸も減少しており、犠牲者の多さを物語っている。

◇ 粗雑なアパートに法外な建築価格

レオパレスは「アパートの建築請負事業」と「物件の賃貸事業」の利益を手にすることができる。しかもレオパレスの建築請負事業の利益率は他社と比べて格段に高い。大手建築会社の利益率が数%にとどまるなか、レオパレスは20%前後の利益を上げてきた。粗雑なアパートの建築を法外な値段で請け負っているためだが、ここにレオパレス商法のカラクリがある。

「チャイムが鳴ったと思って玄関を開けたら四軒隣の部屋だった」「隣の部屋のティッシュを取る音が聞こえる」など、ネット上にある膨大な書き込みからもレオパレスのアパートの安普請さがうかがえるが、この粗雑なアパートの建築を割高な価格で請け負えるのは、同社が喧伝してきた「賃料設定の高さ」と「30年一括借り上げ」があるためだ。

当初の建築コストが高くても、すぐに賃料で回収できるような収支計画書を見せて、さらには30年間にわたってアパートを借り上げる安心感を植え付けることで、莫大な利益を上げるアパート建築を次々と受注していったのだ。なかには、契約書の解約条項に気付いて躊躇する人もいる。レオパレス元幹部によれば、そうした人には、「30年の長期契約なのでお客様から契約解除を申請できるように解約条項を付けている。我々から解約を申し出ることは絶対にない」という常套句を用いていたという。

さらには、アパート経営に関心を持つ土地所有者を東京都中野区にある本店や大阪市北区の支店に設けられた接客ルームに招待する「本社案内」という営業手法を用いて、次々とアパート建設に踏み切らせていった。勧誘する土地所有者の多くは、遊休農地を持つ地方の農家。社長や役員が自ら名刺を切り、「30年にわたって大切なアパートを管理します。我々を信じてください」と言い切ることでほとんどの人が契約書に判を押したといい、「東京に1日連れて来い。それで勝負が決まるんだ」が経営陣の口癖だったという。

 ◇ 「解除条項」に目を付けた取引銀行団

ところが、平成20年9月のリーマン・ショックを機に、清廉なイメージを装っていたレオパレスが素顔を晒すことになる。レオパレスは、管理するアパートの半数近くを製造業者や派遣会社といった法人に転貸する法人契約を強みとしている。製造業者などは、6カ月~1年程度の期間限定で雇う派遣労働者の寮としてレオパレスのアパートを使用していた。だが、リーマン
・ショックによって工場の稼働率低下や閉鎖が相次ぐと、社会問題化した「派遣切り」が起こり、レオパレスも法人契約を打ち切られる事態となった。

工場の従業員以外は誰も住まないような立地にアパートが建てられているため、レオパレスが管理するアパートは瞬く間に入居率が悪化。家賃収入の落ち込みによって、同社の賃貸事業は家賃収入が支払賃料を下回る逆ザヤに転じ、資金繰りも危機的状況に陥った。

22年3月期と23年3月期で巨額赤字を出したレオパレスを延命させるため、取引銀行のりそな銀行と三井住友銀行、さらには三井住友銀行とつながりの深い山田コンサルティンググループで延命策が練られた。ここで彼らが目をつけたのが、契約書に盛り込まれてあった解約条項だ。レオパレスの契約書は、後述する「レオパレス共済会」が発足した平成9年に変更されており、それ以降の契約書に解約条項は記載されていない。

そのため解約させられている大半のアパートが平成9年頃までに建築されたアパートだ。それも通期の原価削減目標を是が非でも達成するため、「終了プロジェクト」と名付けられた強引な契約解除が断行された。

レオパレスは終了プロジェクト前から支払賃料の引き下げ交渉を行っており、「応じてくれたら2年間は絶対に契約を解除しません」と言い切って、大幅な賃料の削減を進めていた。ところが、終了プロジェクトが発動すると、たとえ半年前に賃料を減額したばかりであっても内容証明を送りつけて一方的に契約を解除した。解約条項が盛り込まれていないオーナーであっても、固定賃料保証が終わる10年超の物件では基本的に解約を前提とした交渉が行われ、40~50%程度のさらなる賃料減額を迫った。オーナーはアパートローンの返済に窮した。

しかも、解約時に入居者を他のレオパレス物件に転居させて、入居者ゼロのアパートをオーナーに返すという卑劣な所業までやってのけている。前述のYさんのケースもそうだ。レオパレスは入居者に対して、「オーナーとの契約が終了するとアパートの継続使用が難しくなる」と説明する一方、「負担なく他のレオパレス物件に転居できる」と提案。

終了プロジェクトでオーナーに支払う賃料を削減するとともに、入居率の改善によって空室損失引当金を取り崩すことで昨年度決算を黒字化させたのだ。さらに驚くべきことに、平成9年頃までに建築されたアパートが軒並み契約解除された裏には、目先の賃料削減だけではない、「もう一つの隠された狙いがある」(レオパレス元幹部)という。

当時の物件タイプは、木造ならばゴールド・ネイル、鉄筋ならばゴールド・ボルトと呼ばれるもので、いずれも中国産の格安の建築材が使われていた。レオパレス元幹部によれば、社内には以前から「欠陥品という認識があった」といい、ゴールド・ネイルでは「木が腐って床が抜けるトラブルが多発していた」という。30年一括借り上げを謳い文句にアパートを建築させてきたが、「物件自体が30年もつ代物ではなかった」のだ。その修繕費用から逃れるため、「入居率の状況にかかわらず、是が非でもこれら欠陥アパートを早期に契約解除しておきたかった」のだ。

◇ 「建築基準法違反」にメスは入るか

レオパレスにはもともと、アパートの保守費用を確保するために発足した「レオパレス共済会」という修繕積立金制度があった。それまでの修繕はすべてオーナーの自己資金に頼っていたため、資金がないオーナーのアパートでは必要な修繕を施せないリスクがあった。このリスクを回避したいレオパレスは、新規にアパートを建てるオーナーに対しては共済会への加入を前提として契約書から解約条項を削除し、それ以前にアパートを建てたオーナーに対しては、契約時に約束していた30年間の一括借り上げを明記する約定書を手渡している。

実は、共済会発足前の契約書には30年間の一括借り上げ契約が明確に記されておらず、言わば口約束の状態だった。そのためレオパレス側は、「共済会に加入すれば間違いなく30年借り上げる」と説明し、わざわざ30年にわたる日付入りの契約期間を書いた約定書を作成している。

だが、06年4月に施行された保険業法の改正によって「無認可共済」が保険業法の規制対象になると、同共済会は「トータルサポートシステム」という新しい枠組みに移行した。これは以前の積み立て制度とは異なり、築年数に応じた掛け捨ての修繕金が毎月の賃料から差し引かれるもので、レオパレスが「必要な修繕が発生した」と判断した場合に同社が修繕費用を負担する仕組みだ。

レオパレスには手元資金を確保しておける効果があるが、「ゴールド・ネイルやゴールド・ボルトを抱えていては、手元資金を確保するどころか、いずれ莫大な修繕費が発生しかねない。賃貸事業が厳しさを増すなかで早期に切り捨てる必要があった」という。しかも、「建物の欠陥は建築材だけの問題ではない」という。

レオパレスは建築請負業でありながら、実際の建築は下請けの工務店に丸投げしており、ズブの素人社員達には「工務店が手抜き工事で利益を上げていても見抜くことができない」。そのため、「契約を解除されたアパートの構造を調べれば、建築基準法違反が山のように出てくるはず」と打ち明ける。実際、契約解除によって損害賠償請求を起こされている裁判では、原告側がアパートの構造を調べたところ建築基準法違反に該当する瑕疵がみつかり、違法建築に対する損害賠償も請求されている。

レオパレスは今年度も55億円の最終利益を見込むが、その利益はオーナーを切り捨てることで生まれる支払賃料の削減と空室損失引当金の戻し入れ益だ。しかし、化けの皮が剝がれたいま、リーマン・ショック前に732億円あった建築請負事業の営業利益は昨年度43億円にまで縮小し、今年度中間期は6億円の赤字に転じている。会社を支えてきたオーナーを平気で騙し討ちするレオパレスに、明るい未来が待っているはずがない。

<入居者宛のお願い書>
アパート管理終了に伴う住み替えのお願い。