賃貸経営オーナーの目標は資産を増やすことですから、家賃を維持しながら空室を埋めて収益をあげたいと考えています。それに対して、管理会社は入居率をあげることを目標にしています。
サブリーストラブル相談センターの相談で良くある例ですが、数ヶ月埋まらないとサブリース管理会社の判断で、家賃を下げます。次にオーナーに対しては、家賃の減額請求を行ってきます。極端ですが、オーナーに減額請求が出来る道があるので、兎に角、入居が付けばいいと言う考えです。このように両者の間には根本的なズレがあります。
管理会社の通常業務というのは、
・客付け、
・入金管理、
・クレーム対応、
・入退去の立会い、
・原状回復・修繕の手配
・定期清掃 等
例えば、定期巡回等で故障や不具合を発見した場合、ほとんどの管理会社が「○○が壊れています」。その修繕費用の見積りをオーナーに出し、工事の許諾を求めてきます。
入居促進のために行うリフォームでは、「入居者が入らないのでリフォームしましょう」と提案するのはいいのですが、本来であれば、リフォームに対する費用対効果を考えた上で提案すべきなのです。
リフォームに対する費用対効果
一般的には、リフォームのポイントは、ターゲットとなる層を意識したもので、セキュリティを上げるためのモニター付きインターホン設置と、浴室・キッチン・トイレなど水回りの充実となります。
リフォームは、再投資=資本改善にあたります。出口を見て考えた場合、「リフォームにかけた金額によって、家賃がどのくらい上がり、収益がどのくらい上るのか」というところまで、しっかり計算をして、「その修繕・リフォームをするのか、それともしないのか」判断します。
例えば、6万円の部屋が20戸あるとします。
そうすると、月の家賃収入120万円。
年間で1,440万円です。
物件価格が1億2,000万円だとすると、表面利回りは12%。
5年後に13%で売るというシミュレーションで出口を見て買っているとします。
工事費用200万円を掛けた場合の、出口シミュレーションとは
工事:全室にモニター付きインターホン設置
工事予算:これに200万円をかけて全室工事
家賃:平均2,000円アップ
全室にモニター付きインターホン設置して、家賃を平均2,000円アップする場合、その200万円の工事をするしかないかという判断をするために、どう計算したらいいのでしょうか。
13%で売ると1,440万円÷13%で、1億1,076万円で売却することになります。
1億2,000万円で買った物件を、5年後に利回り13%であれば売れるのではないかと想定して1億1,076万円です。
この200万円かけたことによって、家賃が1部屋あたり2,000円アップするので、62,000円x20戸となり、年間家賃収入が1,488万円。
1.488万円に対しての利回り13%だとすれば、1億1,446円です。家賃が上っているため、同じ利回り13%といっても1億1,446万円になります。
そうすると差額が、1億1,446万円-1億1,076万円=370万円です。
つまり200万円の投資をすることによって、売却益が370万円も増えているわけです。
大規模修繕についても、この様な、費用対効果のシミュレーションを行ってみる必要があります。
修繕は「修繕費」と「資本的支出」に分けられます
修繕による支出は、内容や金額により「修繕費」と「資本的支出」に分けられます。
「修繕費」と「資本的支出」 形式基準区分方法のフローチャート を参照
≪形式基準のポイント≫
①資本的支出に該当しても20万円未満ならすべて修繕費
②おおむね3年以内の周期で修繕・改良等が行われているものはすべて修繕費
③金額にかかわらず明らかに原状回復工事といえるものは全額修繕費
④区分不明なものは、60万円未満または取得価額の10%以下ならすべて修繕費
⑤区分不明なもの(①~④の適用を受けるものを除く)は、継続適用を条件に支出金額の30%か取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費、残額を資本的支出
*資本的支出に該当するものは、全額必要経費とすることはできず、資産に計上することになります。つまり、減価償却費として毎年耐用年数に応じて必要経費に計上されます。
なお、エアコンや給湯器などの設備が古くなったものを、新しいものに取り替える場合には、原状回復工事ではありません。
このように考えてやっていくのが投資です。管理会社さんがこのような提案をできるかというと、できていないのが現状です。
<資本改善とは>
物件に対して再投資を行ない、収益を上げることを「資本改善」といいます。資本改善にあたっては、再投資(リフォーム等)に対して、費用対効果はどれくらいあるのかをしっかり計算する必要があります。
サブリース問題研究会
大谷昭二